Home / Journey / A visit to English freinds

3月7日、私はたった一人でヒースロー空港へ降り立ちました。結婚して以来、外国はもとより国内ですら一人で旅行に出た事はありません。私は自然にバッグを前に抱きかかえ、スーツケースを強く握り締めていました。到着したのは夕方5時でこの時間からヌニートンに住むジェイドルド犬舎を訪ねていくのはかえって危険ですから、この日はロンドンのホテルに泊まる予定にしていました。ここから、パディントンのホテルまで私は電車で行く事にしました。明日からの移動は全て電車です。少しでも慣れておくつもりでした。案外スムーズに電車に乗る事ができホテルに入りました。ホテルはチェーンもないようなひどいホテルでしたが、それでも室内に入るとどっと力が抜け、英語であふれかえる外には出たくないと思いました。しかし、これから1週間英語しか聞く事ができないのです。私は町へサンドイッチを買いに行き、部屋でひっそりと食べ、7時半にはあっという間に眠りについていました。

我が家のメイプルの実家であるジェイドルド犬舎は、ロンドンからバーミンガム方面へ電車で1時間半ヌニートンの町の住宅街にあります。マーチンとアレイン、そして17歳のクリス、14歳のシェリーの4人家族です。エアデールはデイジー(9歳牝)、ロキシー(6歳牝)、ベラ(4歳牝)、ルーサー(1歳牡)の4頭と、あとベラが産んだパピーが3頭いました。1998年のクラフト展でロキシーがBOBを獲得するなど、イギリスのショーでは数々の活躍を見せるジェイドルド犬舎ですが、マーチンはサラリーマンでごく普通の家庭です。もちろん彼らは今年のクラフト展にもルーサーを出陳させるつもりで準備をしてきました。せっかくきれいにトリミングされていたので、とても残念がっていました。

こちらでは2泊お世話になり、ずいぶんゆっくりとエアデールについて話を聞く事ができました。特に食事については色々なアドバイスを受けました。
彼らといっしょにタンワース犬舎を訪問したり、夜はパブや、娘のシェリーのアイリッシュダンスのレッスンを見学したりと、ジェイドルド犬舎での2日間はあっという間に過ぎてしまいました。

タンワース犬舎への訪問はジェイドルドファミリーから私へのプレゼントでした。彼らは車が到着するまで私に内緒にして、私を驚かせてくれました。メイプルの父親はタンワースの犬で、私が一度会ってみたいと思っていた犬でした。タンワース犬舎はイギリスでも古くからある犬舎で創始者はバーバラ ホーランドと言う婦人ですが、現在はジョンとコリンの二人が管理しています。彼らもすでに老境にあり、ショーでのハンドリングなどはジェイドルド犬舎のマーチンがお手伝いをしているようです。

ここの家は100年以上前にたてられた重厚な建物で、古き良きイングランドといった雰囲気を漂わせています。部屋においてある家具もアンティークなものばかりで、飾ってある陶器やインテリアも部屋の雰囲気にマッチしたものばかりでした。そんな中でティーとケーキをいただいていると、これこそイギリスのアフタヌーンティーだと妙に感激してしまいました。
さて犬の話ですが、ここには15歳になる牡犬をはじめ、メイプルの父親のマーリン、あと2頭の牝と1頭の牡全部で5頭のエアデールがいました。マーリンはさすがに多くの牝と交配したスタッドドッグだけあって風格漂う立派な牡でした。またマックという牡は14ヶ月ですが、父犬も母犬もメイプルと同じで本当にメイプルそっくりで、私は日本に留守番させてきたメイプルを思い出し寂しくなりました。周りが緑に囲まれた豊かな環境のこの家で、ジョンとコリンは今までに30頭以上のエアデールを飼ってきたそうです。

ジェイドルドの住むヌニートンの町から北の方に電車で2時間ほど行くと、そこはヨークシャー州に出ます。「THE AIREDALE TERRIER TODAY」の著書でもあるジャネットの家はバンズリーの駅から車で15分ぐらいの住宅地から少し離れた丘の上にあります。この家に来ると初めに目に付くのが真っ黒なまるで熊のように大きな犬たちです。4頭のロシアンブラックテリアが家の中で自由に過ごしています。とてもおとなしい犬で、同じテリアの仲間でも動きも性格もエアデールとは全然違っています。そして6頭のエアデールと、4頭のパピーがいました。

 私はここでは1泊しか泊まれなかったので、本当に短い時間しかなくて残念でしたが、到着した日にジャネットとシェフィールドの町にあるヨーロッパ最大のショッピングセンターへ行き、買い物を楽しみました。そして、夜はパピーを1頭ずつ見せていただきました。それが現在我が家の子となったウィローです。ウィローの父親はロブロイド・グラニットで、1997年にはスタッドドッグNO.1に輝き、これまでの交配回数103回、なんとこどもの数は400頭にも上ります。

 

私が初めてアンのイラストを見たのはいつ頃だったでしょうか。たぶん10年ぐらい前だったと思います。その時、誰もが感じるように「うんうん、エアデールってこうなのよね」と、そのユニークな絵の虜になってしまいました。それからもたまにしかアンの作品に出会うことはありませんでしたが、3年ほど前アメリカのレスキュークラブを通じて、アンと直接知り合うことができました。それ以来、クラブでもアンの新作をどんどん皆さんにもご紹介できるようになり、そのファンは世界中に広がっています。そのアンの家に2日間も泊まるなんて、まるで夢のような出来事でした。アンの住むスティーブンソンはイングランドの北、スコットランド地方の中心都市グラスゴーからさらに電車で1時間ほど海の方に行ったところにあります。私はロブロイド犬舎から電車を3回乗り換えて、7時間かけてスティーブンソンの駅に到着しました。本当に静かな人影の少ない駅に降りると、彼女と夫のジェイクは牡のエアデール、テディ(5歳)を連れて私をここまで迎えに来ていました。彼らの家には他にケレブ(牡3歳)、ルース(牝7歳)、ウィニー(牝10歳)と全部で4頭のエアデールが家の中や広い庭を行ったり来たり自由に過ごしています。庭にはうさぎや、リス、エアデールの置物があらゆるところにあり、広い芝生にかわいい植物、それはまさにあのイラストで見た風景でした。彼女の家は意外にも普通の住宅街にあります。でも、ほんの少し歩けば何もない海岸や、何もない丘などエアデールにとってこの上ない環境です。

次の日、私とアンは朝一番でテディを連れて海岸に散歩に行きました。海岸に着くと、テディはリードを外してもらいます。でも、アンは常に周りを見渡し遠くにでも他の人や犬が見えると、テディを呼びリードをつけます。そして、また誰も見えなくなるとまたリードを外します。そして、常にすべての動作がきちんとコマンド(命令)とともに行われます。遊んでいる途中で呼ばれても、テディの動作も決して嫌々でもありません。もちろん、ご褒美を伴っていますが。テディの散歩が終わると、次はジェイクも一緒にケレブ、ルース、ウィニーを伴ってアンが「バニーヒル」と呼んでいる丘へ散歩に行きます。ここも全く人影もなく、3頭ともリードを外して自由に走り回っています。ただし、このあたりは本当に野ウサギが生息しているそうなので、野ウサギを追いかけたら呼んでも戻ってこないような子は連れて来れないそうです。実はテディがそうなので、彼だけ海岸の散歩だったのです。 

こうやって2日間が過ぎ、私の冒険は終わりを迎えました。皆、私のつたない英語に耳を傾け、どんな話でも真剣に聞き、私の質問には私が理解できるまで何度でも話してくれました。おかげで、思ったよりもたくさんのエアデ−ルの話や、アドバイスを聞くことができました。また今回、すべてが突然のことで多くの人に迷惑をかけながら、また助けていただいて無事に日本に帰ってくることができました。素晴らしい思い出が山のようにできて、どの家も去るときも、とても辛く別れがたい思いでいっぱいでした。