"A visit to
English friends" 杉本 紫乃
毎年3月上旬、世界最大のドッグショー“クラフト展”がイギリスのバーミンガムで開催されます。今年も例年通り、3月8日から3月11日まで予定されており、テリアグループは3月8日と決まっていました。私は昨年6月イギリス・ビングレーで開催されたミレニアム2000の行事に参加して、素晴らしいエアデールたちに会い、それまでメールでやりとりしていた多くの友人たちに会うことができました。そして、次はクラフト展へ行こう!と密かに心で考えていました。 今回はもともと主人が友人に誘われて、クラフト展にハンドラーとして参加する事になっていました。毎回2人で行くには我が家には犬が多すぎます。ビーグル犬のビル(15歳)に始まり、エアデールのレッド(11歳)、ラフティ(8歳)、メープル(2歳)と4頭の犬の面倒を見てくれる人がいないので、私は当然留守番となりました。前回は特別に母に留守番を頼みましたが、とても大変だったそうです。ところが、主人は会社の仕事が忙しくて、休みを取る事が難しくなり、結局クラフト展への参加はあきらめざるを得ませんでした。 2月下旬突然主人から「クラフト行きたい?」と聞かれました。もちろん私は何も考えずに「行く!」と答えてしまったのです。日にちが迫っており、すぐに友人たちへの連絡、飛行機の手配など大急ぎで準備に取りかかり、私の出発は3月6日と決まりました。
ところが、私のイギリス行きが決定してから重大な事が起きてしまったのです。イギリスでは口蹄疫と言う家畜の病気が20年ぶりに発生していました。それは、ヒツジやヤギ、ウシ、ブタなどひづめが割れている動物が感染するもので、その感染力はきわめて強く、
人間や車がそのウイルスを広げてしまう恐れがあるのです。イギリスの友人から入ってくる情報は悪いものばかりでした。競馬の中止、ラグビーの中止など、人がたくさん集まることは次々と中止となっていきました。そして、とうとうクラフト展も延期が決定されました。せっかく夢に見たクラフト展へ行く事ができるようになったというのに・・・・キャンセルをするにも時間がなく、私は早急に結論を出さねばなりませんでした。そして、せっかく主人から与えてもらったこの機会に私はゆっくりと友人宅を泊まり歩いて、普段の彼らの姿からエアデールについてもっと学んできたいと思い、予定通り行く事にしました。また、この機会にスコットランドのアンの家も訪問してみようと思い立ち、彼女に連絡を取りました。アンとはクラフト展で会う約束はしてありましたが、まさかスコットランドまで私が行くと言うとは思わなかったようで、とても驚いていましたが喜んでくれました。こうやって、私の冒険旅行が始まりました。
3月7日、私はたった一人でヒースロー空港へ降り立ちました。結婚して以来、外国はもとより国内ですら一人で旅行に出た事はありません。私は自然にバッグを前に抱きかかえ、スーツケースを強く握り締めていました。到着したのは夕方5時でこの時間からヌニートンに住むジェイドルド犬舎を訪ねていくのはかえって危険ですから、この日はロンドンのホテルに泊まる予定にしていました。ここから、パディントンのホテルまで私は電車で行く事にしました。明日からの移動は全て電車です。少しでも慣れておくつもりでした。案外スムーズに電車に乗る事ができホテルに入りました。ホテルはチェーンもないようなひどいホテルでしたが、それでも室内に入るとどっと力が抜け、英語であふれかえる外には出たくないと思いました。しかし、これから1週間英語しか聞く事ができないのです。私は町へサンドイッチを買いに行き、部屋でひっそりと食べ、7時半にはあっという間に眠りについていました。